RNA結合タンパク質による細胞の増殖分化制御機構

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14035235
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 坂本 博 神戸大学, 理学部, 教授 (00187048)
• 研究分担者: 渡辺 嘉典 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (20212326)
• キーワード: RNA結合タンパク質 / 神経細胞 / リボソーム生合成 / 減数分裂 / 体細胞分裂 / mRNAの安定性

研究概要

研究代表者の研究成果概要:神経細胞に特異的に発現するRNA結合タンパク質HuDの線虫ホモログであるEXC-7の変異体を分離し、その表現型を解析した結果、EXC-7がexcretory canalと呼ばれる線虫の老廃物排出器官の形成に重要な役割を担うことを発見した。また、スプライシングに関連するRNA結合タンパク質であるY14を線虫個体においてRNAi法を用いて特異的に阻害し、その表現型を解析した結果、Y14が線虫の生殖細胞の性分化に重要な役割を担うことを発見した。さらに、これまで機能未知であったRBD-1と名付けられたRNA結合タンパク質が線虫のリボソーム生合成に必須であることを明らかにした。
研究分担者の研究成果概要:分裂酵母のRNA結合タンパク質であるMei2の発現により、減数分裂特異的な遺伝子群の発現が転写以降の制御により安定化される。これら減数分裂特異的な遺伝子は、体細胞分裂のときには逆に特異的に不安定化されていることを明らかにした。さらに、この不安定化にかかわる因子を同定するために新たな遺伝学的なスクリーニングを行い、mmd1遺伝子を単離した。実際に、分裂酵母のmmd1破壊株では、減数分裂特異的遺伝子のmRNAの蓄積がみられ、増殖が著しく阻害された。これらのことから、減数分裂特異的なmRNAは、増殖時にはMmd1により不安定化され、減数分裂時にはMei2に依存して安定化されるという図式が見えてきた。

研究成果

• [文献書誌] Fujita, M.: "The role of the ELAV homologue EXC-7 in the development, of the Caenorhabditis elegans excretory canals."Dev.Biol.. 256. 290-301 (2003)
• [文献書誌] Kawano, T.: "Ce-Y14 and MAG-1, components of the exon-exon junction complex, are required for embryogenesis and germline sexual switching in Caenorhaboditis elegans."Mech.Dev.. 121. 27-35 (2004)
• [文献書誌] Saijou., E.: "RBD-1, a nucleolar RNA-binding protein, is essential for Caenorhabditis elegans early development through 18S ribosomal RNA processing."Nucleic Acids Res.. 32. 1028-1036 (2004)
• [文献書誌] Watanabe, Y.: "Monopolar attachment by Polo."Nature Cell Biol.. 5. 379-382 (2003)
• [文献書誌] Watanabe, Y.: "Cohesins determine the attachment manner of kinetochores to spindle microtubules at meiosis 1 in fission yeast."Mol.Cell.Biol. 23. 3965-3973 (2003)
• [文献書誌] Watanabe, Y.: "Distinct cohesin complexes organize meiotic chromosome domains."Science. 300. 1152-1155 (2003)