研究概要 |
mRNA局在化は、細胞内での情報に偏りを生じる重要な制御系である。研究代表者らは、ゼブラフィッシュ卵母細胞の動物極・植物極や2,4細胞期の卵割面両端に局在する各種mRNAを同定した。本研究では主にこれらのmRNAをモデル系として、『RNAの動くメカニズム』、および、『動くRNAを介したRNA情報発現ネットワーク』の解明を目指し、(1)局在化の分子機構解明、(2)局在化と共役するRNA情報発現制御過程の理解、(3)mRNA局在化の生理的役割の解明、(4)新規局在化RNAの同定、を進めるとともに、(5)RNA動態観察の技術開発、に取り組むこととし、今年度、下記のような成果を挙げた。 (1)ゼブラフィッシュの予定生殖細胞に発現するvasa遺伝子、nanos遺伝子は、初期卵割期に母性mRNAが第1、第2卵割面両端に存在する。これらの局在領域細胞質の除去によって生殖細胞形成が阻害されることを、生殖細胞特異的な遺伝子発現の検討や組織学的な解析などいくつかの手法によって明らかにした。 (2)ゼブラフィッシュnanos母性mRNAは、生殖細胞特異的な安定化・翻訳活性化制御を受ける。さまざまな欠失変異や塩基置換変異を導入したmRNAを初期胚にインジェクションすることにより、この制御に必須な配列を約80残基の領域に限定した。 (3)ゼブラフィッシュ植物極に局在するdaz1 mRNAはRNA結合性蛋白質をコードしている。Daz1蛋白質の機能解析を行い、GUUC配列への結合を介してmRNA翻訳活性を上昇させる因子であることを明らかにした。 (4)RNA結合蛋白質の細胞内機能を理解することを目的として、RNA結合蛋白質のターゲットRNAの検索を行うとともに、RNA結合蛋白質を蛍光染色して細胞内動態の解析を進めている。
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