研究概要 |
mRNA局在化は、細胞内での情報に偏りを生じる重要な制御系である。本研究では『RNAの動くメカニズム』と『動くRNAを介したRNA情報発現ネットワーク』の解明を目指して研究を行い、主に小型淡水魚ゼブラフィッシュ生殖細胞形成に着目した解析から、以下のような研究成果を挙げた。 (i)ゼブラフィッシュの4細胞期にvasa, nanos1, dazlなどの母性mRNAが局在化する細胞質が生殖細胞形成の決定因子(生殖質)として働くことを示した。(ii)これら生殖質mRNAが卵形成過程にミトコンドリア凝集体によって植物極局在化することを示すとともに、Tol IIトランスポゾンによるトランスジェニック技術を用いてmRNA局在化を再現する実験系を構築し、局在化に働くシス配列領域を明らかにした。(iii)生殖質に局在化できなかった余剰のnanos1やTDRD7 mRNAが体細胞に取り込まれると、機能性小分子RNAであるmicroRNAの一種miR-430によってポリ(A)鎖短縮化を介した分解促進・翻訳抑制制御を受けること、一方、miR-430は生殖細胞にも存在するが、生殖細胞特異的な機構によってnanos1やTDRD7の発現抑制が解除されることを示した。また、(iv)miR-430が多くの母性mRNAの分解・翻訳抑制によって母性から接合子型プログラムへの移行調節に働くことを示した。
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