研究概要 |
1.アンチザイム翻訳フレームシフトの分子機構解析:アンチザイム1mRNAのフレームシフト促進配列領域に相補・相同配列を有する短鎖核酸の効果を検討した。上流促進配列に相補的な短鎖RNAオリゴはポリアミンによるフレームシフト促進に拮抗した。また、シュードノット構造を、mRNAとオリゴとのヘテロデュープレックスで置換した場合、単純なステム構造は効果がなかったが、ヘアピン構造をとるオリゴとのデュープレックスによりシュードノット構造を模した場合には促進効果を示した。次に、哺乳動物アンチザイム1のフレームシフト信号配列を大腸菌で発現させた際に見られるバックワードホッピングについて解析し、ホップするペプチジルtRNAの再対合コドンが重要であり、シフト部位と開始コドンの位置関係やシフト部位上流のSD様配列は影響を与えないことが示された。また変異体宿主を用いた解析により,終結因子RF2とRRFの関与が示唆された。 2.分裂酵母におけるNMDとリコーディングの関連:アンチザイムmRNAシフト部位の終止コドンがNMDの標的となる可能性を、作製したUPF3変異体において検討し、何らかの機構によりアンチザイムmRNAがNMDの標的となることが回避されていることが示唆された。 3.新たな翻訳リコーディング配列の検索:分裂酵母UPF3変異体において増加するmRNAの配列モチーフ解析・ORF解析より、約30のフレームシフト候補遺伝子と、6個のリードスルー候補遺伝子を抽出した。現在発現解析を準備中である。 4.哺乳動物におけるフレームシフト制御欠損表現型の解析:アンチザイム1欠損体における胎生致死の原因となる造血細胞分化の異常が、肝造血に先立って二次造血が始まるAGM領域由来の造血細胞にすでに見られることを明らかにし、造血細胞分化にポリアミン高感受性過程があることが示唆された。
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