植物の主軸は茎頂-根端軸であり、その軸性を端的に現している器官が茎である。茎の細長い形態は器官を構成する個々の細胞の軸方向に偏った細胞伸長に依存している。ジベレリン(GA)は植物の伸長生長に顕著な促進作用を示す植物ホルモンである。RSGは我々がタバコからクローン化したbZIP型転写因子である。RSGの機能を阻害すると茎の伸長生長が著しく抑制される。我々はRSGの標的遺伝子の一つがGA合成系のent-カウレン酸化酵素遺伝子であることを見出した。さらに14-3-3タンパク質がRSGの細胞内局在制御を介してRSGの機能を負に調節していることを明らかにした。本研究ではGAによる茎の伸長生長制御の分子機構を明らかにすることを目的とし、転写因子RSGの細胞内局在に影響を与える刺激の探索、RSGをリン酸化するキナーゼについて解析した。 RSGと14-3-3の結合はRSGのSer-114のリン酸化によって制御されている。RSGを基質とし、対照にS114A変異タンパク質を用いて、タバコのタンパク質粗画分中のキナーゼ活性を調べた。RSGのSer-114をリン酸化するキナーゼはCa^<2+>により顕著に活性化された。そこでタバコのCDPKについて解析した。組み換えCDPKを使ったin vitroの解析の結果、CDPKがRSGのSer-114をリン酸化するキナーゼである事が強く示唆された RSGの細胞内局在を制御する刺激をRSG-GFPを発現する形質転換植物を用いて検索した。その結果、GAの内生量を低下させるとRSGは核に蓄積し、逆にGA投与によりRSGは核から消失する事を見出した。この結果はGA内生量調節に関与する転写因子RSGの細胞内局在は、GAによって制御されている事を示している。さらにGAによるRSGの細胞内局在制御には14-3-3との結合が必要であることが明らかになった。GA内生量はGA信号伝達経路を介したフィードバック制御により植物個体では精密に調節されている。今年度得られた結果は転写因子RSGがGAのフィードバック制御に関与する事を示唆している。
|