研究概要 |
1.サイトカイニン受容体遺伝子群の機能解析 AHK2,3遺伝子のノックアウト変異体の検索を行い、両遺伝子についてそれぞれ2ラインずつの挿入変異体を同定できた。いずれの変異についても変異ホモ接合体を確立することができ、通常の生育条件においては何ら特異的な表現型を示すことがない。しかしahk3変異体から調整したカルスはサイトカイニンに対する応答性が低下しており、AHK3がAHK4同様にサイトカイニンレセプターであることが証明できた。さらにこれらahk変異の二重欠損変異体を作製した。ahk2/ahk4ならびにahk3/ahk4の二重変異株は正常な植物体を形成するが、ahk2/ahk3の二重変異株は短い胚軸を持った芽生え、本葉の縮小に伴う小さなロゼット、短い花茎、等の多面的な表現型を示した。胚軸表皮細胞の数は胚発生段階で厳密に決められているが、ahk2/3二重変異株ではこの数が10%減少していた。これらの結果は、1)AHK2がAHK3と同じ細胞機能、すなわちサイトカイニンレセプターとしての機能を保持すること、2)AHK2,3、ひいてはサイトカイニンが細胞分裂活性を正に制御していること、を示している。 2.TCP遺伝子群の機能解析 TCP10遺伝子のT-DNA挿入変異体は植物体のシュート部位において顕著な矮性を示すことを見出した。TCP10遺伝子の過剰生産体はそれとは逆に葉柄や胚軸が伸長する。細胞生物学的解析から、tcp10変異では細胞伸長には問題がないものの、細胞分裂活性が顕著に低下していることが判明した。またTCP10遺伝子の発現をin situ hybridization法によって調べたところ、胚発生後期の胚全体、茎頂分裂組織、花芽分裂組織等の細胞分裂が盛んな部位で発現していることがわかった。これらの結果はTCP10遺伝子産物が細胞分裂の正の制御因子として機能していることを示唆する。
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