研究概要 |
サイトカイニンレセプターをコードすると予想されるAHK2,AHK3,AHK4遺伝子それぞれについて複数のノックアウト変異alleleを同定し、多重変異株の作成と表現型解析を行った。まずAHK2とAHK3が確かにAHK4同様にサイトカイニンの受容体であり、サイトカイニンシグナル伝達の正の制御因子であることを確かめた。各単独変異株およびahk2 ahk4、ahk3 ahk4二重変異株の生育は野生株と変わらず、植物体の正常な生長・分化にはAHK2あるいはAHK3の機能で必要十分である。ahk2 ahk3重変異株はロゼット葉と花茎の伸長においてsemi-dwarf表現型が現れる。さらにahk2 ahk3 ahk4三重変異株では、栄養成長期における根とロゼット葉の生長、生殖成長期への移行および花茎分裂組織の活性低下といった多面的な生長阻害が観察された。詳細な解析から、これらの表現型は器官形成時において細胞分裂活性を保つ機能が低下したことによると結論した。各遺伝子の発現をGUS融合遺伝子を用いて調べたところ、いずれも程度の差こそあれubiquitousに発現し、特にmeristematicな組織と維管束で強い染色が認められた。以上の結果は,AHK遺伝子群(ひいては内性サイトカイニン)が、器官形成時に細胞分裂活性を必要レベルに保つことによって植物の生長を促す役割を果たしていることを示している。しかしながら外性サイトカイニンの研究から考えられてきたSAMの形成と維持についえては三重変異株もおいても弱い表現型しか認められず、胚発生期における内性サイトカイニンの機能的重要性に対する疑問、あるいはシグナルの受容と伝達がもっと複雑である可能性が生じる。これらの可能性を検討することが今後の課題である。
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