頂芽優勢は頂芽が腋芽の成長を抑制し、優先的に成長する相関現象である。オーキシンにより腋芽の成長が抑制され、サイトカイニンにより腋芽の成長が促進されると考えられてきたが、その分子機構が明らかにされていない。これまでの我々の研究により、オーキシンが茎におけるサイトカイニン生合成の律速酵素IPTの発現を抑制することにより、腋芽の成長が抑制されていることが示唆されている。そこで、今年度はエンドウからPsIPT5遺伝子を単離して、そのプロモーターのオーキシンに対する応答性の解析を目的とした。2つのIPT遺伝子、PsIPT1とPsIPT2遺伝子をエンドウのゲノムライブラリーから単離した。塩基配列を決定した結果、これらの遺伝子の翻訳領域にはイントロンが存在しないことが明らかになった。PsIPT5のオルソログと推測しているアラビドプシスのAtIPT5あるいはAtIPT7遺伝子には翻訳領域にも非翻訳領域にもイントロンは存在しない。しかし、PsIPT1とPsIPT2は5'非翻訳領域(開始コドンの直ぐ上流)にそれぞれ406bp、881bpのイントロンが挿入されていた。また、AtIPT5の5'上流域にはオーキシン応答配列AuRE(TGTCNC)と一致する配列が3つ存在する。PsIPT2の場合はイントロンの中にAuREと一致する配列が存在するが、いわゆるプロモーターと推定される5'上流域2kbの中に、AuRE配列と完全に一致する配列は存在しなかった。しかし、P3-IAA4/5、GH3、SAURのようなオーキシンで誘導される遺伝子のプロモーター領域に保存されているT/GGTCCCAT配列が、-93から-86に存在することが明らかになった。一方、PsIPT1の場合はAuREと一致するTGTCTC配列が5'上流域-32から-26に存在することが明らかになった。
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