研究概要 |
(1)頂端分裂組織の維持におけるクロマチン複製・後生的制御の役割 野生型では抑制されているCACTA, TSI等のトランスポゾンや転写サイレンシングを受けているトランスジーンの転写がCAF-1の欠損(fas変異)背景では脱抑制されることを見いだした。茎頂部におけるCACTA脱抑制の様態をfas変異体とddm1変異体とで比較したところ、ddm1変異体ではすべての細胞で一様に脱抑制されるのに対し、fas変異体では、一部の個体の茎頂のごく限られた細胞でのみ脱抑制がみとめられた。これらの成果をまとめて論文を公表した。 (2)相転換の制御機構 FT, FD遺伝子に関するこれまでの解析結果を総合し、日長による葉の維管束篩部におけるFT遺伝子の転写誘導と茎頂における花芽形成のリンクとしてFD遺伝子を位置づけるとともに、FT遺伝子の産物(mRNA,蛋白質)が長距離花成シグナル(フロリゲン)の実体である可能性を提唱する論文を公表した。これは、同時に公表されたP.Wigge, D.Weigel両博士のグループの論文、O.Nilsson博士のグループの論文と合わせて、フロリゲンの実体解明への大きな進展と評価され(Science誌2005年8月12日号)、Science誌のBreakthrough of the Yearの第3位にもランクされた(同誌2005年12月23日号)。 FT遺伝子の相同遺伝子であるTSF遺伝子を新しい花成制御経路統合遺伝子として位置づけ、維管束篩部が諸制御経路の統合の場であるという見方を提唱した。TSF遺伝子の産物も長距離花成シグナルとしてはたらく可能性がある。
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