シロイヌナズナにおける茎頂分裂組織構築の分子機構

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14036222
• 研究機関: 奈良先端科学技術大学院大学
• 研究代表者: 田坂 昌生 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (90179680)
• キーワード: 高等植物 / シロイヌナズナ / 茎頂分裂組織 / CUC1 / CUC2 / 転写因子 / 下流遺伝子 / マイクロアレイ

研究概要

植物の地上部において、発芽後に胚軸の先端の分裂組織(Shoot Apical Meristem;SAM)から新たな器官が次々と作られる。本研究の目的の一つはシロイヌナズナを材料にSAM形成の分子機構の解明をめざすことである。これまでに、胚発生過程および不定芽形成過程で、転写の活性化因子であるCUC1(CUp-shaped Cotyleon 1)とCUC2タンパク質が遺伝学的に下流に存在するSTM(ShooT Meristemless)の発現を調節する事によりSAM形成を促す事を示唆した。そして、CUC1を異所的に発現すると、子葉に切れ込みが入り子葉の上に異所的な不定芽が誘導できる事_一方、stm変異株に導入すると子葉に切れ込みはできるが不定芽は誘導されない事を示した。本年度はこの実験系を用いてオリゴDNAマイクロアレイ解析を行う事で、CUC1の下流で機能する新規遺伝子を同定する実験を試みた。まず、野生型(Ler)と35S::CUC1、stm変異体と35S::CUC1/stmそれぞれの組み合わせでマイグロアレイによる発現のプロファイルの比較を行った。次にこの2つの実験から得られたCUC1下流遺伝子の可能性の高い候補遺伝子に対して、RT-PCRによる発現の再確認を行った。その結果、Lerバックグラウンド及びstmバックグラウンドのどちらにおいても35S::CUC1によって発現が上昇したものが7遺伝子得られた。それらはCUC1の下流かつSTMの上流に位置すると考えられる。またLerバックグラウンドでのみ発現が上昇したものを5遺伝子得ることができ、それらはSTMの下流に位置すると考えられる。両方をあわせるとCUC1の下流で働く遺伝子の候補として、新たに少なくとも12遺伝子を得た。現在、それらに関してin situ hybridization法で胚発生過程における発現パターンを調べている。現在までに、その中の2遺伝子が胚発生過程でCUCやSTMと良く似た発現パターンを示す事を明らかにした。その一つはCUC遺伝子の後期の発現と同じく器官の境界部で強い発現がみられた。もう一つはBELL型ホメオドメインタンパク質BELLRINGER(BLR)をコードしていた。BLRはSTM等と結合してSAMの維持に関わると考えられている。

研究成果

• [文献書誌] Hibara k. et al.: "CUC1 gene activates the expression of SAM-related genes to induce adventitious shoot formation"Plant Jounal. 36. 687-696 (2003)
• [文献書誌] Yano D.et al.: "A SANAR complex containing SGR3/AtVAM3 and ZIG/AtVTIII in gravi-sensing cells is important for Arabidopsis gravitropism"PNAS. 100. 8589-8594 (2003)
• [文献書誌] Surpin M., et al.: "The VTI family of SNARE proteins is necessary for plant viability and mediates different protein transport pathways"Plant Cell. 15. 2885-2899 (2003)
• [文献書誌] Hasimoto M. et al.: "A nucleus-encoded factor, CRR2, is essential for the expression of chloroplast ndhB in Arabidopsis."Plant Jounal. 36. 541-549 (2003)
• [文献書誌] Hatakeda Y., et al.: "Gravitropic response plays an important role in the nutational movements of the shoots of Pharbitis nil and Arabidopsis thaliana"Physiologia Plantarum. 118. 464-473 (2003)
• [文献書誌] Daimon Y., et al.: "The CUP-SHAPED COTYLEDON genes promote adventitious shoot formation on calli"Plant Cell and Physiology. 44. 113-121 (2003)
• [文献書誌] Furutani, M., et al.: "Pattern Formation during Dicotyledonous Plant Embryogenesis"Morphogenesis and Pattern Formation in Biological Systems. 139-152 (2003)