研究概要 |
タンパク質の変性・凝集を分子シャペロンがいかに制御しているのか、という課題について研究してきた。とくに、in vitroで分子シャペロンによる再生・脱凝集機構に興味を抱き 1)タンパク質の高次構造形成を援助するシャペロニンの作用機構を1分子レベルで解析する。 2)異常タンパク質の修復を担うClpB-Hsp70システムの凝集体の脱凝集メカニズムを物理化学的な手法で明らかにする。 3)Hsp104によるアミロイド線維切断機構を調べる。 ことに精力を注いだ。いずれも、他の研究グループと比べて、方法(1分子、線維観察系など)、材料(高度好熱菌など)、情報(未発表結晶構造など)において、有利さあるいは特徴がある。その結果 1)シャペロニンの作用機構 これまでに、大腸菌のシャペロニンであるGroELとGroESの間の相互作用を1分子レベルで観察することに成功した。その解析の結果、シャペロニンの作用サイクルは(従来言われていた一つのタイマーモデルではなく)2つのタイマーからなることが明らかとなった(Mol.Cell,2004)。これによって、変性蛋白質の分子内閉じ込めがうまく説明できるようになった。 2)ClpB-Hsp70システム 好熱菌のClpB-DnaK/DnaJ/GrpEシステムが働くためには熱ショックによってDafA因子がDnaK/DnaJ/GrpE複合体から解離することで活性化されることを明らかにし、報告した(J.Biol.Chem.,2004)。またClpBのX線結晶構造解析に成功し、特徴的なコイルド-コイル領域が脱凝集活性に重要であることを明らかにした(Cell,2004)。また、このコイルド-コイルが、動いて機能を発揮することが示唆された。 3)Hsp104によるアミロイド線維切断機構 酵母のプリオンSup35をモデル系として、Hsp104によるアミロイド線維の切断活性を測定する系を構築し、Hsp104が細胞質中の別の因子と共同して初めて切断が可能になることを発見した(J.Biol.Chem.,2004)。この未知の因子の探索は厳しい競争にになっているが、これに先行するのが目標である。
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