研究概要 |
タンパク質の変性・凝集を分子シャペロンがいかに制御しているのか、という課題について研究してきた。特に、in vitroで分子シャペロンによる再生・脱凝集機構に興味を抱き、 1)タンパク質の高次構造形成を援助するシャペロニンの作用機構を解析する。 2)異常蛋白質の修復を担うClpB-Hsp70システムの凝集体の脱凝集メカニズムを物理化学的な手法で明らかにする。 3)Hsp104によるアミロイド線維切断機構を調べる。 ことに精力を注いだ。いずれも、他の研究グループと比べて、方法(1分子、線維観察系など)、材料(高度好熱菌など)、情報(結晶構造など)において、有利さあるいは特長がある。その結果、 1)シャペロニンの作用機構 これまで大腸菌のシャペロニンであるGroEL/GroESが変性タンパク質を閉じ込めるメカニズムについては十分に明らかにされていなかった。我々が解明した好熱菌のシャペロニンの結晶構造で初めて観察されたGroELとGroESの接触部位Leu309について部位特異的変異によって研究したところ、この部位の疎水牲が変性タンパク質を閉じ込めるに必要な残基であることがわかった(J.Biol.Chem.,2005)。これによって変性タンパク質の閉じ込みメカニズムをうまく説明できるようになった。 2)ClpB-Hsp70システム 好熱菌のClpBのコイルド-コイル構造の動きが脱凝集に重要であることを示唆する結果が得られていた。今回ATP存在下、非存在下でのコイルド-コイルへのシステインへの標識およびジスルフィイド結合の形成を比較した結果、2つのATP結合部位のうち一方へのATPの結合によってコイルド-コイルが大きく動き、これに伴ってもう一方へのATP結合が促進されるという結果が得られた(J.Biol.Chem.,2005)。これによって2つのATP結合部位に機能的な協同性が存在することが明らかとなった。
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