研究課題/領域番号 |
14037219
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研究機関 | 富山医科薬科大学 |
研究代表者 |
小澤 哲夫 富山医科薬科大学, 附属病院, 助手 (80262525)
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研究分担者 |
今中 常雄 富山医科薬科大学, 薬学部, 教授 (50119559)
守田 雅志 富山医科薬科大学, 薬学部, 助手 (20191033)
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キーワード | 蛋白質 / 細胞・組織 / 小胞体 / プロテアソーム |
研究概要 |
アンチトロンビン(AT)遺伝子変異Cys95Arg(ATC95R)のheterozygoteでは血中AT抗原量が正常の半分に減少することから、変異分子の分泌障害が推定される。我々はATC95R安定発現CHO細胞株を樹立し、その細胞内分子動態を解析した結果、分泌速度が野性型の約1/50に低下していること、細胞内分解を受けずに高マンノース型糖鎖のまま蓄積していること、蓄積部位は細胞内に新規に形成された顆粒状構造の内部であることを明らかにした。この特異な顆粒状構造物はRussell bodyに類似しているが、免疫電顕による観察などから小胞体に由来すると推定された。当初、我々は変異型AT分子がプロテアソームで分解されると予想したが、結果はそれとは全く異なる極めて興味深いものであった。さらに解析を進めた結果、ATC95R分子は細胞内で分子間ダイマーを形成していること、小胞体分子シャペロン、GRP78と結合していること、アグリソームのような凝集体は形成していないことを明らかにした。ATC95Rでは変異により1ケ所の分子内ジスルフィド結合(C21-C95)が失われ、かわりに、余分なCys残基により分子間ジスルフィド結合を生ずることが推定される。そこで、AT分子内の6個のCysをそれぞれArgに置換した変異ATと、各ジスルフィド結合を形成するペアのCysを二つともArgに置換した変異ATをそれぞれ発現するCHO細胞株を樹立した。その結果、単一のCysをArgに置換した場合に細胞外分泌速度の低下と細胞内蓄積が認められ、細胞内蓄積におけるCys残基の重要性が裏付けられた。このように、ATC95Rは変異蛋白が細胞内分解を受けない極めてユニークなAT欠乏症モデルであり、また、タンパク質の品質管理機構、小胞体ストレス応答機構、Russell body形成のモデルとしても有用性が期待される。
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