シャペロニンは基質ペプチドの折りたたみを支援する大きく構造を変化させる分子モーターである。その構造変化のダイナミクスはATPase反応の進行、基質ペプチドとの結合と連携している。その連携の仕方・仕組みを理解することが本研究の最終目標である。本研究では、研究代表者が開発した高速原子間力顕微鏡(AFM)を活用し、GroEL(+GroES+基質)の構造変化の動態を、ナノメーターの解像度で且つ映像として捉えることを目指した。 初めて経験する試料系であり、且つ、比較的小さいタンパク質であることなどの理由により、本年度においてはまずは像を撮り、そこで見出された問題点を解決していくことから着手した。孤立した小さいタンパク質のAFM観察では、探針・試料間にかかる力によって起こる試料の動きが無視できなくなることと、探針先端の曲率半径の大きさが像に与える影響が大きくなるという問題点が一般にある。実際、GroELでも同様であった。以下に、行った改良、得られた成果をまとめる。 1)探針・試料間にかかる力を軽減化する様々な工夫を行った。その結果、フィードバック制御に動的特性を持たせることにより、力の軽減化に成功した。 2)探針は電子線を1点に当てるEBD法により作成するが、その先端曲率半径はベストの条件でもせいぜい8nm程度である。そこで、アルゴンガス存在下でのプラズマエッチングを行ったところ、4nmにまで細くすることに成功した。 3)上記の工夫により、マイカ表面上に一様に立ったGroELの像をきれいに撮ることができるようになった。中心の穴やサブユニットまで解像することができた。GroELの濃度と像との関係を調べたところ、薄い場合には単層リングが多く、濃くすると2重リングになることを見出した。 4)ATP存在下、非存在下で像ととり、単層GroELの形状変化を、高さ及び幅の変化として測定した。非存在下で高さは7.6nm、存在下では6.7nmになり、ATPの添加で約1nm低くなることが見出された。この変化は予想された方向と逆であった。幅も若干小さくなる傾向にあった。
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