研究概要 |
17年度に発見した新因子Tim41のキャラクタリゼーションを引き続き行い,その機能から名称をTam41に変更した。Tam41が機能欠損すると,in vivoおよびin vitroで内膜のトランスロケータTIM23複合体を経由する内膜やマトリクスのタンパク質のミトコンドリア移行に欠損が生じる。Tam41の機能欠損は,モータ因子Tim16のTIM23複合体へのアセンブリー効率を下げ,TIM23複合体の見かけの分子量も減少させることから,Tam41は内膜のトランスロケータTIM23複合体の機能的アセンブリーを維持するのに必要であると考えられる。複雑な膜タンパク質複合体は,一般に機能的アセンブリーの維持にTam41のようなメンテナンス因子を必要とするのかもしれない。 Tim15は,遠藤らが発見した,ミトコンドリア内膜トランスロケータTIM23複合体のモータ因子mtHsp70の補助因子である。Tim15がどのようにmtHsp70の機能を助けるのかを明らかにするために,Tim15のコアドメインを大腸菌に発現・調製し,そのNMR構造を決定した。決定されたNMR構造はL字型で(下図左),表面電荷の分布は不均等であった(下図右)。そこで電荷分布をもとに様々な残基を置換し,変異Tim15のみを発現する酵母株の増殖を調べることにより,Tim15の機能に必須のアミノ酸残基を同定した。さらに,mtHsp70の溶解度(Tim15が発現しないとmtHsp70は凝集する),大腸菌細胞内で変異Tim15を発現した時のmtHsp70の溶解度を調べたところ,これらのアミノ酸残基が置換すると,mtHsp70の溶解度も低下することが分かった。したがって,Tim15の機能はmtHsp70との相互作用と関連し,その相互作用はmtHsp70を可溶性に保つ働きがあることが分かった。
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