研究概要 |
ミトコンドリアは二つの膜(外膜と内膜)で囲まれた必須オルガネラである。約1000種類のミトコンドリア構成タンパク質の大部分はサイトゾルで合成され,外膜と内膜のトランスロケータの働きでミトコンドリア内に取り込まれ,外膜,膜間部,内膜,マトリクスのいずれかの区画に仕分けられる。われわれは,外膜でβバレル型膜タンパク質のアセンブリーに関わるTom38, Tom13,膜間部の可溶性タンパク質の外膜透過とジスルフィド結合形成に関わるTim40,タンパク質の外膜透過と内膜透過を共役させ,プレ配列の内膜受容体としても機能するTim50,内膜トランスロケータTIM23複合体の構成因子のアセンブリーと機能構造維持に関わるTam41, TIM23複合体のモータ因子として働くHsp70の機能を助けるTim15を新たに発見・同定した。さらにTim15のNMR構造を決定し,その構造に基づいて作成した変異体の機能解析を行うことにより,Tim15の機能領域がHsp70との相互作用領域と一致することを見いだした。 ミトコンドリアタンパク質の膜透過機構に関して,外膜トランスロケータであるTOM40複合体のチャネル(孔)には,通過中の前駆体タンパク質を保護するシャペロン機能があることを見いだした。このシャペロン機能は,外膜透過後の前駆体が膜間部で凝集することを防いだり,外膜透過に際して必要な前駆体のアンフォールディングを促進する役割があるものと考えられる。さらに,ミトコンドリアへのin vitroでのインポート速度と原子間力顕微鏡(AFM)による力学的安定性を比較することにより,ミトコンドリアのトランスロケータは、プレ配列近傍が部分的にほどけた膜透過中間体と相互作用し、その安定性を減少させることによって分子全体の効率的なアンフォールディングを引き起こすことを明らかにした。
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