研究概要 |
小胞体関連分解(ERAD)および小胞体におけるproductive foldingがテーマである。ERADに関しては、Man 8レクチン様因子EDEMを発見し、その役割に関する研究を行っている。EDEMはミスフォールドしたタンパク質のERADを促進するが、正しくフォールドしたタンパク質には相互作用せず、また分解にも、分泌にも影響を与えないことを明らかにした。すなわちEDEMは正しくフォールドしたものとミスフォールドしたものとを見分けて、分解にまわすか、正しい分泌経路にまわすかを決定する因子である可能性がある。またEDEMがミスフォールドした基質(α1-antitrypsin null HongKong, NHK)のジスルフィド結合による2量体形成を抑えることも明らかにし、EDEMが分子シャペロン様の機能を持つことを発見した。 本年度は、ほ乳類細胞におけるEDEMには2つのホモローグが存在することを示し、EDEM2,EDEM3と名付けてその機能の解析を行った。いずれもERADを促進するが、特にEDEM3においては、マンノースをトリミングするマンノシダーゼ様活性をもち、これが小胞体関連分解に必須であることを示した。 Productive foldingのモデルとして、HSP47によるコラーゲンのフォールディングについて解析を進めている。今年度は、HSP47ノックアウト細胞においては、分泌されたコラーゲンの繊維形成に著しい異常が見られることを明らかにし、コラーゲンNプロペプチドのプロセシングにも異常をきたすことによって、細胞外で太いコラーゲン繊維を形成できないことを明らかにした。さらに、HSP47のコンディショナルノックアウトによって組織特異的なHSP47の機能を明らかにすることと、HSP47の構造機能相関を明らかにするため、X線結晶解析に取り組むとともに、HSP47上でのコラーゲン結合部位の特定を急いでいる。
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