平成13年度までの研究でMAPキナーゼスーパーフアミリーに属する新しいSer/ThrキナーゼMOKを同定し、マウス及びヒトの完全長cDNAをクローニングした。MOKと細胞内で相互作用するタンパク質を検索した結果、HSP90及びCdc37を含む一群の分子シャペロンがMOKと結合することを見いだした。また、HSP90の特異的阻害剤であるゲルダナマイシンで細胞を処理することによってMOKがプロテアソーム依存性に速やかに分解されることから、HSP90-Cdc37分子シャペロンがMOKキナーゼの細胞内安定性に必須であることも判った。この分解にCHIPが関与するかどうかを調べたが、CHIPはMOK-シャペロン複合体には含まれていなかった。 分子シャペロンの作用機構の詳細を知るためにはその立体構造の解明が必要である。HSP90に関しては既に幾つかのドメインについて分子構造が明らかにされている。今回、Cdc37の立体構造を明らかにする目的でそのX線結晶解析を試みている。Cdc37に関してはドメイン構造が明らかではないため、全長のCdc37に加えてC末端欠失変異体を4種、N末端欠失変異体を3種類、及び想定されるリン酸化部位の変異体2種類をコードする発現プラスミドを構築し、いずれもGST-tagのついたリコンビナントタンパク質を大腸菌に発現させ、glutathioneビーズを用いて精製した。さらにGST-tag部分をPrescission proteaseで切断・除去し、最終的にResourseQ陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。上記のうち全長Cdc37を含めて計8種類のCdc37変異体がいずれもほぼ均一で予想される分子量を持つタンパク質として充分量精製された。現在これらのリコンビナントタンパク質を用いて各種条件下において結晶化のコンディションを探索中である。
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