真核生物に保存されている小胞体ストレスセンサーIRE1のストレス感知機構を分子レベルで解析するために、酵母Ire1の小胞体内腔部分の種々の変異体を作製しその生理機能を詳細に解析した。平成18年度に、Ire1の活性化にはストレスによるBiPの解離による2量体化と、その後のN末側の立体構造の変化が必要であることを明らかとしたが、Ire1のストレスに応じた挙動の蛍光抗体を用いた観察、免疫電顕、各種変異型Ire1を用いたレポーターアッセイ、Ire1小胞体内腔領域の組換えタンパク質を用いた生化学的な解析から、酵母Ire1の活性化は2ステップにより制御されていることを明らかにした。ステップ1では、ストレス刺激により小胞体シャペロンBiPがIre1から解離することによるオリゴマー形成(クラスタリング)、ステップ2はストレスにより生じた変性タンパク質がオリゴマー化したIre1と相互作用し初めて活性化するというものである。また新規DnaJB12タンパク質の生理機能の解析を行った。このDnaJB12タンパク質は小胞体膜上の2型膜タンパク質として発現しており、J領域をサイトゾル側に向け、嚢胞性線維症に関与する塩素イオンチャネル(CFTR)の小胞体におけるフォールディングに関与している。CFTRは正常なタンパク質としても小胞体関連分解により分解を受けやすいタンパク質であるが、DnaJB12の過剰発現は分解を促進し、このタンパク質のノックダウンを行うと分解レベルを抑えることが明らかとなった。DnaJB12はサイトゾルのHsc70と協力し、膜タンパク質の小胞体品質管理に重要な役割をになっていることが示唆された。
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