研究概要 |
以下の2つの研究項目を行った。 1.分子シャペロンの機能発現に関する研究 大腸菌由来のシャペロニンGroELの機能サイクル中間体の普遍性と生物学的意義を明らかにするため,蛋白質工学的に作成したGroEL C138Wを用いて,新しく我々が独自に発見した三重複合体,GroEL-中間体-GroESの基質タンパク質の大きさと複合体形成の温度依存性を調べた。その結果,分子量5万4千以下の分子はGroEL-GroESの空間に閉じ込まれ得ることが明らかになった。また,この三重複合体は大腸菌内のin vivoでも機能することを明らかにした。一方,分子シャペロンを用いてタンパク質の大量発現中に起こりうる細胞内封入体の可溶化における実用的,応用的実験もいくつの蛋白質を例にして明らかにし,分子シャペロンを利用した大腸菌内共発現はその一つの有力な方法であることを示した。 2.タンパク質のコンフォメーション変化とアミロイド線維形成に関する研究 病気とは無関係のオリゴマー蛋白質であるコシャペロニンGroESが典型的なアミロイド線維を形成することを発見した。このアミロイド線維形成能の特徴を,GroES7量体の構造的特長をコンパクトさから評価したSAXSデータと照らし合わせたところ,オリゴマー構造全体が壊れていく構造遷移領域で主に生じることが明らかになった。一方,パーキンソン病と関連したαシヌクレインタンパク質のアミロイド線維形成は,通常では変性して大きく広がった分子が,NaCl存在下でコンパクトになるときに早く形成されることを発見した。これらのことから,タンパク質のコンフォメーション変化によるアミロイド線維形成は,完全にネイティブ構造をとっているか,あるいは完全に変性しているときの構造からは形成されにくく,中途半端に構造形成しているか,あるいは変性したり再生したりしている分子種からアミロイド線維が形成されやすいということが明らかになった。
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