細胞を構成するタンパク質の大部分を占める半減期数時間以上の長寿命タンパク質は、最終的にオートファジーと呼ばれる非選択的分解機構により積極的に消化されており、その分解産物は細胞のアミノ酸プールに還元され再利用される。この大規模なタンパク質リサイクルシステムは、発生・分化に際した細胞の体制転換に深く関わると考えられ、またフォールディング異常病における蓄積異常タンパク質の除去にも働いている可能性がある。いまだ未知の部分が多いオートファジーの分子機構とその役割の解明を目的として本研究を行った。まずオートファジーを担う膜構造オートファゴソームの形成に必須なApg5を含むタンパク質複合体を精製し、その構成成分として新規タンパク質Apg16Lを同定した。Apg16Lは、Apg5と結合しオートファゴソームに局在化する。Apg16Lは酵母Apg16には無いWDリピートを持ち、哺乳動物特有の機構の存在が示唆された。次にエンドソーム輸送を制御するSKD1タンパク質に依存したエンドソームからオートファゴソームへの輸送が、オートファジーの後期過程であるオートファゴソームとリソソームの融合に必要であることを見出した。さらに、ハンチントン舞踏病などの原因となるポリグルタミンの細胞内凝集や肝疾患の原因となるα_1アンチトリプシン変異体の細胞内蓄積が、APG5遺伝子破壊細胞ではそれらの分解低下によって著しく亢進することを示し、異常タンパク質の排除にオートファジーが貢献していることを世界に先駆け示した。
|