研究概要 |
酸化物中八面体位置を占めるCo^<3+>(3d)^6の中間スピン状態(S=1,以後IS)は、低スピン(S=0,以後LS)、及び高スピン状態(S=2,以後HS)に比べてエネルギーが高く、通常実現することはないと考えられていたが、近年、LaCoO_3では100K近傍から半導体-金属転移の起こる500Kまでの広い温度範囲でIS状態が主たるスピン状態であるという提案がなされている。本研究では、(1)LS-ISスピン転移の動的性質とIS電子状態の軌道状態を明らかにし、(2)LaCoO_3中でIS状態が安定化される原因を探るために、(A)単一ドメインのLaCoO_3単結晶を用いて超音波測定を行い、(B)La_<1-x>Ca_xCoO_3の電子物性を調べた。 (A)では、赤外線集中加熱炉で育成した擬立方晶のLaCoO_3単結晶(4つの菱面晶結晶ドメインからなる)の[111]軸方向に圧力を加えて、1500℃から1300℃までstress annealingを行い、単一ドメインの単結晶を得ることに成功した。その試料で菱面晶系[111]軸方向の10MHz縦波超音波測定を行い、100K転移に伴う格子のソフト化を観測した。多ドメイン試料の擬立方晶[111]軸方向の実験結果に比べて、ソフト化の程度が大きく、スピン転移に伴う弾性以上が実際に菱面晶の対称性を持つことがわかった。 (B)では、Ca置換により、電気伝導が増大し、低温で強磁性が出現する(低濃度の場合はスピングラス)というSr置換と類似の物性を示すことが判明した。La^<3+>サイトへの2価イオン導入すると、格子体積には関係なくholeの導入によりIS状態が安定すること、Ca^<2+>導入の場合、Sr^<2+>の場合に比べてholeのmobilityが小さいこと、さらに両置換とも、臨界量以上の置換でFermi準位に状態密度の発生することが明らかになった。
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