超対称標準模型はゲージ階層構造の問題を解決するために考えられているが、超対称性の破れに関連して、μ問題と呼ばれるゲージ階層構造の問題の名残と言える問題や超対称粒子の世代構造に関わる超対称フレーバー問題などの問題をもたらす。今年度の研究においては、これらの問題を中心に取り扱った。その主たる成果の概要は、以下の通りである。 1.末松は、超対称統一模型に共通の問題である2重項-3重項分離問題とゲージーノ質量の普遍性の間の関係を中心に研究を進めた。そのなかでゲージーノ質量のCP位相の普遍性が一般的に破れ得ること、通常考えられている以上に多くのCP位相が物理的効果をもたらすこと等を指摘した。さらにこのような場合のμ問題の特徴について調べるとともに、超対称粒子による電子や中性子の電気双極子能率への量子補正について、超対称粒子の質量がO(100)GeVで、かつ超対称性の破れの位相がO(1)であっても実験に抵触しない可能性について検討を進めた。また、ニュートリノ質量の小ささやμ問題を説明するために中間エネルギースケールの存在を仮定した模型で、インフラトンがμ問題やニュートリノ質量と密接に結びつく可能性を調べ、それがレプトジェネシスを引き起こす可能性について検討を行った。 2.久保は、標準模型や超対称標準模型に世代対称性としてS(3)対称性を導入することを提案し、S(3)不変な標準模型や超対称標準模型のラグランジアンを具体的に与えた。それらを用い、ニュートリノ振動の説明に要するレプトン混合やニュートリノ質量の再現可能性について調べるとともに、超対称粒子の世代構造についても調べ、フレーバーの変化する中性過程等との整合性についての検討を進めた。
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