研究概要 |
PINフォトダイオード(PD)を用いた、静電捕集型ラドン検出器は、平成元年に岐阜大学で考案された。本研究ではこの検出器のバックグラウンドをさらに1桁減らして、検出感度を0.1(mBq/m3)領域まで向上させることを目的とする。 第1の方法は、PDのセラミックパッケージに含まれるU, Th, Kの自然放射性同位体の含有量を1桁以上減らすことである。セラミックから放出されるα線、β線のバックグラウンドを減ずることができる。 第2の方法は、ステンレス製静電捕集容器の内面の複合電解研磨処理を改良して、超高品質鏡面に仕上げることである。このような加工処理でステンレス表面の均質性・非付着性が向上して、捕集容器内面から放出されるラドンを減らすことができる。 浜松フォトニクス(株)で、K-freeアルミナ製のセラミックパッケージ(三井マテリアル社製MA960)のPD試作品を5個製作した。難波俊雄氏がスーパーカミオカンデにあるゲルマニウム検出器を使用して放射線量を測定した。U-chain:0.0044,Th-chain:0.0066,K-40:0.029(Bq)であった。従来のPDの測定結果、U-chain:0.2,Th-chain:0.06,K-40:0.9(Bq)と比較すると、U-chainで1/50まで減ずることができた。斉藤商店で70リットルのステンレス製静電捕集容器の内面の表面平滑性0.2μm(今までは0.4μm)の複合電解研磨処理したラドン検出器を2台製作した。この容器に、新開発PD試作品、ポリエチレン製のフィードスルー、1種AニトリルゴムのOリング(大小2個使用)を取り付けて、純エアーで容器内をパージして、2ヶ月間のバックグランド実験を実施した。その結果は(6.3±2.7)(^<214>Po/d)であった。この測定結果と、以前の校正実験で求めた、絶対湿度0.08(g/m^3)の校正係数1.8(^<214>Po/d)/(mBq/m3)からラドン濃度検出限界値を求めると、5(mBq/m3)となった。 この実験結果は、当初期待した0.1(mBq/m^3)領域と比較して、5倍以上大きな値となった。この原因として(1)テフロンのOリングに交換する、(2)容器の複合電解研磨処理が考えられる。 現在、検出器のリークテストを行い、Oリングを交換して、2台目のラドン検出器でバックグランド実験を実施しているところである。
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