本研究では、長基線ニュートリノ振動実験(K2K実験)でニュートリノ振動測定の系統誤差の要因であるニュートリノ・原子核反応の詳細な研究を行う。このため全感知型シンチレータ飛跡検出器を開発しKEKのニュートリノ実験施設に設置する。 平成14年度はこの検出器試作機を製作し、宇宙線ミューオンに対し20光電子/cmの光量がでていることを測定した。これにより抽出型シンチレータの波長変換フアイバー読み出し法を確立した。また、多チャンネル化の解決策である、64チャンネル光電子増倍管専用の読み出し用電子回路を、LSI(IDE社製のVA/TAチップ)を用いて開発した。またこの電子回路制御用モジュールの開発も併せて行った。 検出器基礎開発は順調に進み、平成15年1月より実機検出器の一部分をニュートリノ実験施設に設置し、ニュートリノデータの収集を開始した。少数統計ながらニュートリノ事象の観測に成功した。またビーム起源の中性子に因るバックグラウンドの定量的評価を行っている。また検出器の様々な基本性能を毎日100万事象収集する宇宙線データを用いて評価した。また宇宙線事象で検出器のエネンルギースケールの較正を行を約10%の精度で行った。この精度は行く行くは3%以下に向上する予定である。上記の全ての結果は平成15年3月の日本物理学会において発表している。また、K2K実験当初の目的であるニュートリノ振動の解析も併せて行い、物理結果を論文に発表した。 平成15年夏には検出器の全部分を設置し、より高精度でのニュートリノ反応の研究を展開する予定である。
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