2相型キセノン検出器を2重β崩壊深索実験に応用するための基礎研究を中心に行った。この検出器の特徴は電場方向に対する位置分解能が数100μmと非常に優れていることである。キセノン136の2重ベータ崩壊のQ値2.48MeV近辺のエネルギーを持つガンマ線バックグラウンドのキセノン中での反応の大部分(99.9%)はコンプトン散乱或いは電子対生成によるものであり、2本以上の離れた電子線に起因した信号となる。それに対して2重β崩壊による信号は2つのβ線が繋がった1本のトラックになるため、バックグラウンドのガンマ線によるものと実際の信号とを非常に高い確率で識別出来るはずであり、これを実際のガンマ線の信号を観測することにより確認した。-方、神岡の地下実験施設に設置した1kgテスト検出器を用いてバックグラウンドの線量測定を行った。エネルギー2.5MeV近辺のバックグラウンドは0.01counts/kg/keV/day程度であることが分かった。検出器周辺に使用している物質の放射線不純物濃度を測定しそれらが検出器におよぼす影響をコンピューターシミュレーションにより求め、それと実際の測定値とを比較し、その発生の起源を解明した。その結果、使用材質を選別することにより、さらなる低バックグラウンド化が可能であることを示した。2相型キセノン検出器を2重β崩壊探索実験に利用した場合、バックグラウンドを0.0001counts/kg/keV/day以下に抑えることが出来、世界でもトップクラスの探索実験が可能であることが分かった。さらに、この検出器は暗黒物質探索実験、太陽ニュートリノの検出も同時に行える多目的大型検出器として利用することを提案した。
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