現在稼働中のK2K実験(雑誌論文の1)では、ニュートリノ反応で出てくるミュー粒子のエネルギーを、鉄板とドリフトチューブを交互に並べた飛程測定器で測っている。建設中のJPARCの50GeV陽子シンクロトロンを使った、さらに精度の良いニュートリノ実験が計画され準備が進んでいる。この実験での前置検出器のひとつの可能性としてトロイダル電磁石を用いたミュー粒子検出器を考えている。今年度はその試作としてトロイダル電磁石を設計、製作し運転を行なった。 設計は次のように行なった。磁場は、あまり無理をしない範囲でできるだけ高磁場ということで、1.85テスラを目標とした。エネルギー分解能は、磁場による曲げ角と多重散乱の関係で決まる。ある程度の分解能を保ってなるべく低エネルギーのミュー粒子まで測定できるように鉄の厚さを決めた。鉄の厚さ40cmとした結果0.6GeV以上のミュー粒子をエネルギー分解能30%で測定できることになった。これは将来のCP測定の時、重要となる電荷の正負を3シグマ以上の精度で識別できることになる。 電磁石は、製造会社で研究者立ち会いのもと通電試験を行なった。絶縁特性、磁場特性、温度特性とも十分仕様を満たした。納入後、研究者側で通電試験、磁場測定を行ない、特性を確認した。磁場測定には、磁石にサーチコイルを巻き、電流上げ下げ時のピックアップ電圧をFADCで読み、積分することによって測った。この方法によって十分正確に磁極内の磁場が測定できることがわかった。
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