長基線ニュートリノ実験では、ニュートリノ反応によって出てくるミュー粒子を測定する必要がある。現在、稼動中のK2K実験(雑誌論文の1)では、ミュー粒子のエネルギーを鉄板とドリフトチューブを交互に並べた飛程測定器で測っている。建設中のJ-PARCでのニュートリノ実験あるいは将来のニュートリノファクトリーでの実験では、より高エネルギーのミュー粒子まで電荷も含めて測定したいのでトロイダル電磁石を使ったミュー粒子測定器を考えている。 本補助金によって14年度に試作、磁場テストを行なったトロイダル電磁石を用いて、15年度にはビームテストによりその性能を確認した。ビームはKEK・12GeVPS・T1ビームラインのパイ又はミューを用いた。トロイダル電磁石で曲げられた後の軌道を測るため、2面のホドスコープカウンターを製作した。ホドスコープは、25mm x 13mm x 200mmのシンチレーターバーを16本並べ、WLSファイバーを通してMAPMTで読み出すものとした。電磁石の電流については、14年度に行なった磁場測定の結果から低電流でも高磁場が得られることがわかっていたので、小型の電源を用い100Aとした。この時の磁場は1.7Tである。0.8GeV/cから2GeV/cのビームでデータを取り運動量分解能を求めた。結果は1GeV/cで30%と、ほぼ予想通りの値が得られた。低運動量側と高運動量側で予想より悪い値になったが、これは低運動量側では大きく曲げられた粒子がホドスコープのアクセプタンスからはずれてしまったため、また高運動量側ではホドスコープの1本の幅で決まるトラッキングの精度が十分でなかったためと思われる。実用に際しては、トラッキングデバイスを適当なものとすることによって十分な測定精度が得られるものと思われる。 このテストにより、将来の実験に実用可能な感触が得られた。
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