研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、PLD法により作成したリチウムイオン伝導性ガラス薄膜を用いて、石英基板上に種々の薄膜リチウムイオン二次電池を構成し、その電気化学的特性と二次電池充放電特性の評価を行った。 その結果、正極としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、固体電解質としてリチウム・バナジウム・ケイ酸塩ガラス(LVSO)、負極としてアモルファス・スズ酸化物(a-SnO)を用いることで、安定なリチウムイオン二次電池としての特性が得られる事が分かった。面積は5mm×5mmで、厚さは、正極・固体電解質・負極がそれぞれ200nm,800nm,200nm程度であり、合計で1〜2ミクロン程度である。起電力は、2〜3ボルトで充放電量に依存する。充放電電流は1平方センチ当り10〜200μA、100回以上の充放電サイクル特性が得られている。この電池を用いて、液晶表示デジタル時計、メロディーICなどの動作を確認した。 一方、ここで用いられた正極と固体電解質の基礎的な薄膜物性を明らかにするために、X線回折、赤外吸収、ラマン散乱、可視紫外吸収、電子・イオン伝導度などを測定した。その結果、成膜直後のLiCoO2は、アモルフアス状態でバンドの広がりが大きく電子伝導度も小さいが、熱処理による結晶化後は、バンドギャップが明瞭に現れ、電子(ホール)伝導度も上昇した。これは、熱処理による電池特性の改善、特に起電力の組成や放電電流に対する依存性の減少、の主な要因と考えられる。 また、固体電解質として用いた、LVSO膜についても、成膜条件による薄膜物性やガラス構造の違いを検討した結果、成膜時や成膜後に混入する微量な炭酸ガスが、初期の充放電時に分解され、不可逆容量の原因や薄膜電池の剥離・破壊につながる事が分かった。 これらの成果は、日本物理学会、固体イオニクス学会などで発表され、間も無く、第9回アジア固体イオニクス国際会議でも発表される。また、既に2編の論文として報告されている。また、河北新報(2003.12.12)にも報道された。
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