チップ上で化学反応を進行させ、分析を行うμTASやLab-on-a-Chipでは、何らかの送液機構が必要となる。キャピラリー電気泳動で用いられる電気浸透流による送液はシンプルであるが高電圧を必要とする問題がある。一方、マイクロポンプ、マイクロバルブの研究はまだ素子レベルの研究が中心で、これをより高度な送液シスチムに応用する試みはまだ非常に少ない。また、現状のポンプでは、やはり高駆動電圧、高消費電力という問題が残されている。このため、構造、機能が単純で集積化が容易に実現でき、しかも、低駆動電圧、低消費電力のマイクロポンプ、マイクロバルブの作製、およびこれらを集積化した送液機構の検討を行った。 ここでは、電気化学的に水素のバブルを生成・消滅させることにより、上記のポンプ、バルブを実現した。ガラス基板上に水素を生成・消滅させるための電極群を形成し、微小流路および電解液を蓄えるための微小容器をPDMSにより形成した。チップ上に1個のポンプと2個のバルブからなる送液系を2組形成し、これらにつながる微小流路を出口付近で合流させた。ポンプとバルブの開閉を順次行うことにより、チップ外から色素溶液を吸引し、微小流路内を移動させることができた。2つの微小流路が合流したところでは、2つの溶液が層流となっていることが観察できた。Lab-on-a-Chipへの適用可能性を調べるため、モデル的な系として、Luciferinとluciferase、ATPを含む2種類の溶液を、導入・送液し、合流後、流れを止めて拡散により混合させた。この酵素反応に伴う化学発光が観察された。今後、タンパク質の分析等に応用してゆく。
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