研究概要 |
SiO_2/Si基板上にスパッタ成膜したNi薄膜(20nm)を電子線リソグラフィにより素子基本パターンへと加工した.その後,接合部近傍のNi細線にAFM局所酸化法を適応してプレーナ型強磁性トンネル接合を作製した.これまでに得られた試料ではリーク電流が支配的であり,トンネル接合に起因した電流電圧特性やトンネル磁気抵抗効果を観測するには至っていない.接合部のAFM像ではNio酸化部分が明瞭に観測されずに,未酸化領域の存在が示唆され,リーク電流の原因となっていることが考えられる.細線構造のAFM局所酸化では,細線部分の電気抵抗が高いことが酸化を進行させる電気化学反応に必要な電子の移動を妨げている可能性がある.細線長を短くして,接合部と電極パッドの距離を近づけることにより,細線部分の電気抵抗を低減させた試料を用いることが望ましいとの知見を得た. 従来の積層型強磁性トンネル接合に代わり,プレーナ型強磁性トンネル接合を用いる利点として微小接合において生じる帯電効果(クーロンブロッケイド効果)による低消費電力化を検討してきた.微小電極において顕著となる浮遊容量(浮遊電荷)の影響を検討したところ,容量結合型素子では浮遊電荷が動作特性の不安定性に直結することがわかった.浮遊電荷の影響のない抵抗結合型素子の基本特性を解析するとともに,新たに抵抗容量結合型素子を提案し,その電流電圧特性においてヒステリシスを示す可能性を明らかにした.
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