本研究代表者は、これまで高分解能透過電子顕微鏡内で、金やシリコンなどのナノ構造体を常温接合し、構造変化を原子レベルでその場で直視するとともに、接合時・破断時に印加されている応力を同時測定して力学特性を明らかにしてきた。さらに、接合界面のコンダクタンス変化も測定し、ナノ接合界面を有するデバイス開発を進めてきた。接合瞬間のこうした原子配列、応力-歪み関係、電気伝導特性のダイナミックスをミリ秒単位で解析できる手法は、この手法(アトムファクトリー)だけである。 本年度は、このアトムファクトリーによって、銅のナノ接点作製と、引き離しの過程を原子直視的に解析した。すなわち、先端実用材料への応用研究を本課題の研究で新たに進めた.これまでの金属ナノ接点の引き離しでは、くびれが一度生じると、そのまま破断すると考えられていた。本実験では、電界効果によって原子移動が促進されて、くびれ部で結晶成長が生じ、くびれが回復し、ナノワイヤーが形成することをすることを見出した。こうした複雑な現象の解析ができる手法は、原子挙動観察と力測定を、その場で同時に可能な本手法だけであることが再認識された。この結晶成長に起因するくびれの回復現象は、エレクトロマイグレーションなどで破断しかけた配線を自己修復させる機能として利用できる可能性を秘めていることがわかった。今後、銅だけでなく、貴金属をはじめとする金属、半導体、セラミックスの各ナノ結晶への応用研究が可能であることが明らかになった.
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