研究課題/領域番号 |
14041204
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
渡辺 順次 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (90111666)
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研究分担者 |
山本 隆一 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (10016743)
竹添 秀男 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (10108194)
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キーワード | コレステリック液晶 / レーザ発振 / ストップバンド / 一次元光学結晶 / らせん周期 / 蛍光色素 / 波長可変レーザ |
研究概要 |
本研究は、高分子をベースにしたコレステリック固体を作り、そのコレステリックらせん周期構造を利用し、半導体レーザの分布帰還キャビティと類似な構造をもつ分布帰還型レーザを設計することを目的として行った。 まず、ポリマー色素をドープしたポリエステル等のコレステリック液晶セルを調整し、試料セルの透過スペクトルから、左巻き螺旋に対応した左円偏光の選択反射を観測した。また、ドープした色素のクロロホルム中での蛍光スペクトルと、同セルの蛍光スペクトルとを比較した結果、選択反射の位置に対応した500nm付近にディップが現れ、ストップバンドの存在により内部発光の閉じ込めが起こっていることを明らかにすることができた。この試料セルにレーザポンプ光を入射させその強度を上げてゆくと、ある特定の入射強度を超えたところで指向性の高い、強力な発光が現れる。発光強度は明らかに閾値を持って線形増大しており、レーザ発振が起こっていることが判明した。閾値強度は約0.018μJであり、非常に小さい。透過、蛍光スペクトルとの比較から、長波長側のストップバンド端に対応して、線幅の狭い発振が現れていることが認められた。 以上のように、我々の測定ではレーザー発振は2つあるストップバンド端のうち、常に長波長側のバンド端で観測されている。螺旋周期構造中では、ストップバンドの長波長側は液晶分子の配向方向に対し平行な偏光モード、短波長側は垂直な偏光モードに対応している。このため、色素分子が液晶中で配向し、かつその発光遷移モーメントが液晶分子に対し平行、あるいは垂直に揃っていれば、発振効率が高く発振閾値も低くなると予想され、モード選択や効率向上が実現されていると考えられる。このレーザは、フォトニック効果の発現由来となる螺旋構造が自発的に形成されていることが特徴である。より発振効率の高い状態を実現できれば、より幅広い可変波長域の実現や連続発振、半導体レーザによる励起も可能であろう。今後は、より適した発振条件を材料の選択およびセル構造といった見地から探索を行う。
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