研究概要 |
本研究は,マイクロ波領域で動作し,入力波長分離と高速位相制御が同時に可能な新しい位相格子形空間光変調デバイスを,電気光学結晶の分極反転を利用して試作・開発することを目的として実施した. まず,光空間制御素子実現の基礎となる電気光学結晶の分極反転技術の研究を進めた.厚い結晶,あるいは広く一様な分極反転領域の形成のためには,分極反転前後の結晶状態を調べることが重要である.分極反転電気光学結晶の状態をX線回折を用いて観察し,反転前と反転後,およびアニール後の状態変化について詳細に調べた.使用した結晶は通常の一致溶融組成の結晶,定比組成結晶,また,一致溶融組成と定比組成の中間状態の結晶である.観察の結果によれば,分極反転後の結晶状態は完全に結晶の向きが反転しているわけではなく,Ta原子の移動はなくLi原子の移動のみであることを示唆していた. 斜めの周期分極反転を行った電気光学結晶にマイクロ波共振電極を取り付け,進行波位相格子形の光周波数シフタ・周波数分離素子を試作した.ブラッグ領域の回折を実現するために分極反転の微細化に取り組み,パルス電界印加によって周期100μm以下を実現したが,完全なブラッグ回折動作には至っていない.マイクロ波変調実験ではラマンナス回折とブラッグ回折の中間にあるため,変調電力の増加によっても回折次数はある程度以上には増大しないことが確認された.今後の共振器改良によって変調電力はさらに低減できると考えられる.今後さらに微細化および大面積における一様反転を実現する必要がある. 本周波数シフタはバルク形であり,空間ビームを保ったまま光周波数をシフトできることから,光通信分野以外においてもさまざまな応用が期待で,光共振器の応用について検討した.
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