研究概要 |
1.はじめに 本研究では農薬等の水田農業由来内分泌かく乱可能物質による環境影響リスク削減のため、河川中へ排水される農薬の環境影響リスクを予測し、的確かつ迅速なリスクアセスメントを行うためのツールを開発することを目標とする。今年度は水田群から水路を経て流出する農薬の挙動を把握するため,排水路系統に囲まれた水田群での農薬流出モニタリングを行った。また,農薬流出モデルの構築に関しては,水田群,水路の各部分におけるタンクモデルによる構築を試みる。 2.実験方法 茨城県つくば市の用排水設備を備えた約10haの水田群で農薬流出モニタリングを行った。実験区の水田群は,4水田ブロック,2支線排水路,逆川へ排水される1幹線排水路及び水田群内の代表水田より構成され,灌漑は霞ヶ浦用水と地区内循環灌漑用水を水源としたパイプライン方式によるものである。モニタリング期間は4月28日より6月16日までの50日間で,7地点において流量観測及び週一回のサンプリングを実験区内で行った。試料水は採水後直ちに前処理を行い,農薬成分の定量にはガスクロマトグラフ(GC/NPD)を用いた。 3.結果 農薬流出のモニタリングにおいて,モニタリング初期の大きな排水は,田植え作業に伴う落水や降雨に起因したものと考えられる。幹線排水路区分での流出は降雨のあった直後または1日後にピーク流量に達する傾向にあった。実験区の排水路における農薬はモニタリング開始後から約1ヶ月以上に渡り検出されたが検出濃度のピーク時期と濃度の値は観測地点により違いさらに農薬の種類により違った。水田群からの農薬流出モデル開発においては,水田ブロックごとの水田タンク,排水路タンク及び河川タンクでの水収支及び農薬の物質収支を計算していくモデル概念を構築した。
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