研究概要 |
内分泌攪乱物質の影響は生殖腺の性が決定される稚魚期において重篤であり、河川で観察された精子形成不全の多くはこの延長線上にあるものと推察される。我々はコイとアマゴの遺伝的全雄群を用いて個体レベルでの性分化への影響評価モデル構築を目指して本年度は以下の様な研究を行い成果を得た。 全雄個体群作成:コイとアマゴで雄性発生により作出した超雄(YY)と通常雌(XX)との交配により遺伝的全雄(XY)個体群を作成した。 アマゴでは孵化後1週間目より30日間、浸漬処理によりNP(10-100μg/L)を単独またはE2(10ng/L)と複合投与した。NP単独投与では50μg/L以上で卵巣形成(性転換)、精巣卵形成といった雌化の兆候が現れたのに対して、E2との複合投与では20μg/Lでも雌化することが確認された。E2(10ng/L)単独では雌化の兆候は確認されなかった。コイでは孵化後1ヶ月目より、2,4,6ヶ月間薬剤含有させた餌を与えることで曝露を行った。エストラジオール17β(E2:1-0.01mg/g diet)、ノニルフェノール(NP:10-φ.1mg/g diet)をそれぞれ単独で経口投与したところ、E2では0.01mg/g、NP1mg/gより高い濃度で濃度依存的に卵巣腔形成、精巣卵形成、不妊化といった生殖異常が観察された。また、処理開始2ヶ月目(孵化後3ヶ月)の稚魚ですでに用量依存的な血中VTGの上昇を確認できた。 コイの実験では河川で観察された生殖異常と相同な現象を実験的に再現することができた。また稚魚においても女性ホルモン依存的にVTGが誘導され、少なくともこの時期においては生殖異常と相関関係を持つことが確認された。アマゴの実験ではNPとE2がそれぞれ単独では影響しない濃度でも複合投与により雌化を誘導することが確認された。
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