研究概要 |
我々はコイの遺伝的全雄群を用いて個体レベルでの影響評価を行い、汎用バイオマーカーであるVTGと配偶子形成異常との相関性について検証した。 実験方法:全雄個体群作成:雄性発生により作出した超雄(YY)と通常雌(XX)との交配により遺伝的全雄(XY)個体群を作成した。 飼育実験:孵化後1ヶ月目より薬剤を含有させた餌を2〜6ヶ月間与え、その後孵化後1年目まで通常飼育を行った。この間、適宜一部の個体を屠殺し、生殖腺組織像観察、血中VTG測定、RNAサンプル調製などに供した。また、多摩川本流(多摩市)ならびに流域の下水処理場終末排水路より採取した水を用いた飼育実験も実施した。 血中VTG測定:化学発光免疫測定法およびマンシーニ法により実験魚血清中のVTG濃度を測定した。 RNA測定:各固体から調整したRNA試料に対して逆転写反応を行った後、リアルタイムPCRによる測定を行った。 2,4、6ヶ月間エストラジオール17β(E2:1mg-10ng/g diet)またはノニルフェノール(NP:10-0.1mg/g diet)の経口投与実験を行った。全ての実験においてE2では10μg/g diet以上、NPでは10mg/g diet投与群で精巣卵形成、卵巣化(性転換)、不妊化などの異常所見が観察された。しかし2ヶ月処理群では4,6ヶ月処理群に比べその割合は低かった。異常所見が観察された濃度区では投与開始2ヶ月目の時点で用量依存的に極めて高値(30-170mg/ml)の血中VTGが検出され、リアルタイムPCRによるmRNAの検出においても同様の傾向が認められた。一方、成魚卵巣からVTG受容体、FIGα、DMOといった卵形成関連遺伝子の単離に成功し、それらの発現が成魚精巣では極めて低いことを確認した。現在、外因性女性ホルモン様物質が全雄稚魚におけるこれらの遺伝子の発現にどのような影響を及ぼすか調査中である
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