研究概要 |
本年度は,女性ホルモン様作用を持つ内分泌撹乱物質の周生期曝露が次世代の神経機能の発達に及ぼす影響を検討する目的で,以下のようなin vivoおよびin vitro実験をおこなった. 1.in vitro実験:ラット胎仔視床下部由来の初代培養細胞において,ビスフェノールA(BPA),ノニルフェノール(NP),ジエチルスチルベストロール(DES)はシナプシンIの発現を促進すること,その作用は逆U字型の用量-反応関係を示すことを確認し,あらたに,この作用がMEK/MAPキナーゼを介することを,阻害剤添加実験で明らかにした. 2.in vivo実験:胎生後期から新生仔期マウスをDESに,経母体曝露した(経口投与;0.3あるいは3μg/kg/day).オスの性行動は増加し、攻撃行動も増加する傾向を示した。行動変化を個体内で検討すると、先に行ったオープンフィールド活動量と受動回避反応の間には負の相関、攻撃行動と性行動の間には正の相関が認められ、周生期DESは全般的にhyper-activeな行動変化をもたらし、活動性の増加がそれらの学習成績の抑制に関与している可能性が示唆された。これらの行動に関与することの知られる腹側被蓋野、中脳中心灰白質、青斑核領域においてチロシン水酸化酵素(TH)陽性細胞数を免疫組織化学を用いて定量的に評価した結果、DES投与群と対照群との間に有意な差を認めなかった。今後、低用量DESによる行動変化の神経メカニズムについては更に検索対象を広げて検討するとともに,NP, DESについても行動学的評価を予定している.
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