研究概要 |
昨年度までに我々は、Th2免疫応答が誘導されている旋毛虫感染マウスにおいてビスフェノールAがin vitroおよびin vivoでIL-4産生を増強させることを報告した。今年度はBPAによる汚染が感染症に対する宿主の防御機構になんらかの影響を与えているか否かを原虫Leishmania majorをもちいて検討した。 L.Major感染マウスにBPA投与によりIL-4産生が上昇し、Th2免疫応答が誘導されて抵抗性から感受性に変化すると予想されたC57BL/6マウスは、投与群でも非投与群でもfootpadの腫脹は小さく自然に治癒した。サイトカイン産生は投与群においてIL-4,IFN-γとも上昇していた。さらに、本来Th2免疫応答を示し感染に感受性を示すBALB/cマウスはBPA投与群において非投与群に比べfootpadの腫脹が減少した。脾臓における抗原特異的IL-4産生には大きな変化はなかったが、IFN-γ産生は投与群で有意に上昇していた。L.major感染B6マウスではBPA投与により感染8週後の脾細胞からのIFN-γ,IL-4双方の産生上昇が見られたが、BALB/cマウスにおいてはIL-4産生には差は見られずIFN-γ産生のみが上昇した。 長期的な投与の影響を見る目的で、BPAを飲料水に加えた場合も同様の結果が得られた。脾細胞からのIFN-γ産生上昇は見られなかったがIL-R産生が抑制され、Th1/Th2バランスはTh1にシフトした。 旋毛虫を用いた実験結果とL.majorをもちいた研究において異なる免疫応答が誘導された原因として、BPAが影響を与える細胞群の違いなどが考えられ、エストロゲンのbiphasicな作用などとも類似点があるように思われる。現在、BPAが生体内でどのような作用を及ぼしているのかについて、調節性T細胞や樹状細胞などの抗原提示細胞などについて検討をすすめている。
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