研究概要 |
ラット由来CYP1A1は塩素置換数が0から3のジベンゾパラダイオキシンに対して高い活性を示した。エポキシドを介すると考えられる環の水酸化および転位反応、脱塩素を伴う水酸化反応、環の開裂が主な反応であり、反応は多段階で起こるため、代謝物は多種類存在した。しかしながら、最も毒性が高い2,3,7,8-TCDDに対しては、活性を検出することができなかった。CYP1A1の立体構造は未知であるが、これまでに立体構造が明らかになった数種の水溶性P450および1種の膜結合型P450との配列比較から、CYP1A1の立体構造を推定した。基質結合部位および基質取り込み経路と推測した部位の空間の拡大により2,3,7,8-TCDDを代謝するCYP1A1を作製できるのではないかと考え、これらの領域に存在する分子量の大きな疎水性のアミノ酸残基をアラニンに置換し、24種の変異体を得た。その中で、4種の変異体F228A, F240A, F319A, F385Aにおいて、2,3,7,8-TCDDに対する活性を検出することができた。F228A, F319AおよびF385Aは基質結合部位と推測される領域における変異体であり、F240Aは基質取り込み経路と推測される領域(F-G loop)における変異体である。GC-MS分析の結果、2,3,7,8-TCDDの代謝物は、8位の塩素原子が水酸基に置き換わった8-OH-2,3,7-TriCDDであることがわかった。Ahレセプターアッセイの結果、この代謝物のAhレセプターへの親和性は2,3,7,8-TCDDの10万分の1以下に低下しており、この代謝がダイオキシンの解毒に有用であることが示唆された。
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