研究概要 |
核内受容体特にEDCの作用機序に深く関わっているestrogen receptor(ER)のturnoverへのEDCの影響について調べ,EDCの新しい作用機序として受容体のturnover即ち安定性への影響を検討している.今年度は以下の結果を得た. 1.Phthalate(PA)とBisphenol A(BSA)はCos-7 cellに過剰発現させたER-α,-βのみならずIshikawa cellにおいてendogenousなERを介した転写も誘導した. 2.endogenousなligandである17β-estradiolの存在下でER-α,-βとSUG1は用量依存性に結合した.またPAやBSAの存在下でER-α,-βはSUG1と結合したが,その誘導能に著明な差を認めた.BSAは特にER-βとSUG1の結合誘導能をほとんど認めなかった. 3.ER-α,-β発現細胞である子宮内膜癌由来Ishikawa cellを用いてcyclohexamideにより蛋白合成を抑制しProteasome阻害剤を添加しER蛋白の変化を調べたところ,Proteasome阻害剤無添加群ではER蛋白は急速に分解されたが,Proteasome阻害剤を加えるとこの分解は阻害された.また17β-estradiolの存在下では受容体蛋白分解が促進されたが,Proteasome阻害剤にてこの促進能は阻害された.これらの作用はER-α,-βに共通の現象であった.ER-βは,BSAの存在下で17β-estradiolと比較して受容体蛋白分解が著明に抑制された. 以上より,ER蛋白の分解はproteasomeを介していると考えられた.またSUG1はリガンド存在下にERに結合しproteasomeによる受容体蛋白分解に関与していると考えられた.EDC特にBSAはER-β-SUG1結合をほとんど誘導せず,ER-β受容体蛋白分解を著明に抑制した.EDCはER受容体蛋白レベルにも影響を与えることが示唆され,EDCの作用機序の一つとして,更に検討が必要と考えられた.
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