研究概要 |
1.Estradiol-17β(E2)及び内分泌攪乱物質によるインスリン様成長因子I(IGF-I)mRNA発現への影響マウス子宮内膜間質細胞の初代培養系において,E2,diethylstilbestrol(DES),4-hydroxytamoxifen(4OH-tamoxifen),bisphenol A,LY294002,genistein(すべて10^<-9>M)による24時間の処理を行い,IGF-I mRNAの発現量を調べた.E2,genistein及びLY294002処理により対照群に比較してIGF-I mRNA量は増加したが,その他の処理においては,IGF-I mRNA量に有意な差は認められなかった. 2.E2およびIGF-I処理によるDNA合成への影響 マウス子宮内膜間質細胞をE2(10^<-9>M)およびIGF-I(10^<-9>M)により処理し,DNA合成を測定した.E2処理では36時間後に,IGF-I処理では16時間後にDNA合成の有意な増加が認められた.このことからE2並びにIGF-Iは間質細胞の増殖に関与することが示唆される. 3.IGF-IによるDNA合成促進効果に対するgenistein,LY294002及びPD98059の影響 マウス子宮内膜間質細胞の初代培養系においてIGF-I処理によるDNA合成の増加は,genistein,LY294002及びPD98059処理(全て10^<-7>M)により抑制された.E2,およびgenisteinによりIGF-I mRNAの発現が高まった.genisteinはtyrosine kinaseの抑制剤であり,LY294002はphosphatidylinositol 3-kinase(PI3K)の抑制剤であり,またPD98059はMAPKinaseの抑制剤である.従って,IGF-Iによる間質細胞のDNA合成の促進には,tyrosine kinaseを介する成長因子・サイトカイン受容体を介する転写制御系や,PI3KならびにMAPKinaseの関与するシグナル伝達系が関わることが示唆される. Phytoestrogenであるといわれるgenisteinは,子宮内膜において,IGF-I mRNAの発現を高めること並びに,子宮内膜間質細胞のDNA合成を抑制することが分かった.genisteinは,子宮内膜間質細胞において,発情ホルモン受容体ならびにIGF-I受容体に作用して,細胞増殖や細胞機能の発現に影響を与える可能性が示唆された.
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