内分泌撹乱作用が懸念される化学物質を、迅速にスクリーニングする方法が必要とされ、特にエストロゲン受容体に対するアッセイ系は現在までにほぼ確立しつつある。しかし、アンドロゲン・男性ホルモン受容体については、安定な試験系がほとんど無いのが現状である。本研究では、アンドロゲン受容体タンパク質に負荷を掛けない、温和なアッセイ系の設計をめざし、2つの試験系について検討した。 まず、リガンド結合に伴う受容体コンホメーション変化を感知(センシング)する抗体を用いるアッセイ法を検討した。抗原としてαヘリックスH12を含むペプチドを化学合成したが、異常なほどに吸着性が高く、合成法および精製法を工夫して免疫に必要な量を確保することができた。H12の後にあるループBに相当ペプチドも同様に得ることができた。KLHに架橋したこれら2種のペプチドをウサギおよびラットに免疫した後、十分な抗体力価の抗体生成が確認された。精製は、KLH免沈、次いで抗原ペプチドのアフィニティカラムで行った。これらの抗体について、アンドロゲン受容体のリガンド存在、非存在下で調べたところ、予想された応答特性が得られた。今後、ELISA基盤のアッセイ法を検討する予定である。 ところで、女性ホルモン受容体結合試験では、混ぜるだけでB/F分離が不要のアッセイ系の構築に成功した。そこで、本研究では蛍光アンドロゲンをトレーサーとして用いる同様の方法を検討した。テストステロンにω-アミノ酸を架橋剤にして、フルオレセインを結合させた一連の蛍光リガンド(架橋鎖長n=1〜10)の合成に成功した。これらについて、受容体結合試験および蛍光強度試験を実施し、架橋鎖長n=6および7のものがトレーサーとして使用できることが判明した。こうして、放射標識アンドロゲンを用いることなしに、蛍光強度の差異を指標にした受容体結合試験がはじめて可能となった。
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