内分泌撹乱作用が懸念される非常に多数の既存化学物質を、迅速にスクリーニングする必要がある。化学物質の内分泌撹乱作用の評価においては、受容体結合親和性のみならず、ホルモン作用を持つのか、抗ホルモン作用を持つのかについても試験しなければならない。ところで、ホルモンや化学物質が受容体(アポ型)に結合すると、受容体のコンホメーションが変化する(ホロ型)。我々は最近、エストロゲン受容体についてこうしたコンホメーション変化を感知(センシング)する抗体の調製に成功した。そして、この抗体を用いて化学物質の受容体結合性とホルモン活性を同時に解析・評価できるアッセイ系の構築に成就した。本研究ではまず、特異的な結合性がみられた約300種を含む合計503化学物質について、ポリクローナル抗体を用いた競合ELISA試験の原理に基づくアッセイを実施した。各化学物質の試験溶液(10^<-10>〜10^<-4>M)を一定量の受容体と作用させたのち、固定化した抗原ペプチドと共存下でセンシング抗体に競合させた。解析の結果得られたシグモイド曲線から、最大抗体応答性(%)と抗体応答有効濃度(EC_<50>)を求めた。その結果、図1に示すように、抗体応答有効濃度(横軸)を指標にとして見たとき、活性の強弱について5つのグループに大まかに分けられることが判明した。こうして、現在入手可能なすべての化学物質の試験の結果、第1〜第3グループに天然エストロゲンを含む61化学物質が内分泌撹乱候補物質として認められた。アンドロゲン受容体のコンホメーション変化センシング抗体の作製については、抗体の作製は完了しているものの、現在までリガンド存在、非存在下での有効な応答差を得るに至っていない。一方、アンドロゲンに蛍光核を結合させた新規な蛍光トレーサーを化学合成し、これを用いた結合試験法の開発に成功した。B/F分離なしのアッセイ系確立のため条件検討を継続しているが、現在まで有効な方法の確立に至っていない。
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