食物連鎖の高次に位置している淡水カメ及び魚食性鳥類から雌性化指標遺伝子vitellogenin(VTG)及びVMO-I(vitelline membrane outer layer protein I)、雄性化指標遺伝子DMRT1(doublesex and mab-3 related transcription factor 1)のクローニングを試みた。クサガメ(Chinemys reevesii)からは、389bpのVTGcDNA断片、670bpのVMO-I cDNA全長(ORF552bp)、1020bpのDMRT1cDNAのORF全長のクローニング及び塩基配列の決定に成功した。クサガメの各臓器から抽出したtotal RNAを用いたRT-PCRによって、VTG及びVMO-Iは肝臓、DMRT-1は、精巣特異的に発現している事が分かった。未成熟のクサガメについて17β-estradiol(E2)を腹腔内投与した群と対照としてコーンオイルを投与した群でVMO-I mRNAの発現を半定量的なRT-PCRにより検討したところ、雌雄の別、E2の投与の有無に関わらず、VMO-I mRNAが発現している事が分かった。次に、成熟雄クサガメについて、E2(0.5mg/kg B.W.)を腹腔内に単回投与した個体と、対照群としてコーンオイルを投与した個体について肝臓でのVMO-I mRNAの発現を同じくRT-PCRで検討したところ、E2投与群でのみVMO-Iの発現が認められた。このことから、VMO-Iは、成熟雄カメにおける新規雌性化指標遺伝子として用いられる事が示された。 魚食性鳥類については、ウミネコ(Larus crassirostris)及びカワウ(Phalacrocorax carbo)の肝臓から554bp及び185bpのVTG cDNA断片のクローニング及び塩基配列の決定に成功した。野外で捕獲したカワウ4羽(雌3、雄1)の肝臓からRT-PCRにより、VTG mRNAの発現を検討したところ、雌のみならず、本来発現が認められない雄にもVTG mRNAの発現が認められた。この事から、カワウでも雄の雌性化がおこっている可能性が示された。
|