本年度は鳥類(チョウゲンボウ(猛禽類)2羽、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ドバト2羽の合計6羽)の生体組織についてフェノール系環境ホルモン(ノニルフェノール:NP、オクチルフェノール:OP、ビスフェノールA : BPA)およびPCBsの測定を行い、これらの環境ホルモンの蓄積特性と代謝について議論した。 PCBsは全ての生体組織試料から検出された。種間別ではハシブトガラス体内のPCBs濃度が最も高濃度(他の種の約100〜1000倍)であった。組織別では胃内容物<胸筋<肝臓<脂肪の順に高い濃度でPCBsが蓄積していた。 PCBs組成を組織間・種間で比較した結果、チョウゲンボウ、カラスの脂肪中PCBs組成は、胃内容物に比べ、代謝されやすい低塩素数同族異性体の存在割合が低く、これらの種の体内での代謝が示された。一方ドバトの脂肪中では低塩素同族異性体が胃内容物と同程度に存在し、ドバトのPCBs代謝能が低いことが示唆された。また各検体の胃内容物と脂肪組織中の同族異性体組成をメタボリックインデックス等により検討した結果、ハシブトガラスのPCBs代謝能がハシボソガラスを含む他の種よりも高いことが示唆された。この種が肉食性であることやPCBsの暴露量が高いこと等が原因の可能性がある。 フェノール系環境ホルモン(NP、OP、BPA)については分析した全ての生体組織から有意には(ng/g-wet tissueのオーダー以上では)検出されなかった。一方ドバトの胃内容物からBPAとNPがそれぞれ36.3、5240ng/g-wet tissueの高濃度で検出された。このことはフェノール系環境ホルモンが代謝されやすいことを示唆している。これらフェノール系環境ホルモンについては蓄積による生物影響よりも継続的な暴露による影響について今後の検討を進めていく必要性が示された。
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