研究概要 |
環境中に存在する内分泌攪乱物質が評価できる線虫をモデル生物としてcDNAマイクロアレイを検出系に用いるin vivoバイオアッセイ法の可能性について検討した. 線虫C. elegansを同調培養し、孵化後2日目のL2/3ステージになる幼虫を用い,1、10、100、1000nMステロイドホルモン,コルチゾールおよび合成ホルモンを5時間暴露した.暴露群に対して未暴露群をコントロールと,定法に従いmRNAを調製した後,逆転写反応を行った.この際,同量のmRNAを暴露群はcy3,コントロール群はCy5でラベルして標識cDNAを合成し,2つの標識cDNAを等量混合後,cDNAマイクロアレイ上でハイブリダイゼーションした.洗浄後,スキャナーで各スポットの蛍光強度を測定し,蛍光強度の相対値を統計処理し,発現量の変化を調べ,特異的に発現が促進あるいは抑制されている遺伝子を検索した. その結果,cDNAマイクロアレイを用いて線虫の約9000個の遺伝子の発現変動を一斉に分析することで,それぞれのホルモンによって引き起こされる遺伝子の発現変動が検出できた.独立した数回の実験結果から,cDNAマイクロアレイは比較的再現性よく定量することが可能であることが示され,従来の生物学的影響を評価するin vivoバイオアッセイ法で残されていた再現性等多くの問題が解決できる可能性が示唆された.一方,cDNAマイクロアレイより得られたデータをクラスター解析することで,遺伝子の発現が促進あるいは抑制された遺伝子クラスターが形成されることが分かり,化学物質特異的な応答を示す遺伝子群が存在することを見出した.以上のことから,線虫をモデルとしたcDNAマイクロアレイを用いたバイオアッセイ系は多出力系として発展させることで,内分泌攪乱物質の評価が可能なバイオアッセイ系になりうると考えられる.
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