本研究課題では、卵巣分化過程におけるエストロゲンの機能の一つを「生殖細胞の増殖誘起」としてとらえ、「卵巣分化時の生殖細胞の増殖誘起」におけるエストロゲン/エストロゲン様内分泌撹乱物質の作用機構の共通・相違性を明らかにすることを目的とする。今年度は、1)既に開始しているサブトラクション法によるXX生殖腺、性転換XY生殖腺の卵巣分化過程における「エストロゲンによる生殖細胞の増殖誘起」に関わるエストロゲンの下流遺伝子の候補をそれぞれ検索し、reverse Northern法、ISHによって最終候補遺伝子をスクリーニングした。エストロゲンによって発現の増加するもの、減少するものをそれぞれ、7、3個得た。発現の増加するものの中で生殖細胞に特異的に発現するものが2個見られた以外は、すべて体細胞に発現するものであった。これらの遺伝子の5'上流域のゲノム配列を決定したところ、幾つかはエストロゲン応答配列(ERE)を持つことを確認した。エストロゲンにより、発現が増加し、かつEREをもつものとしてCYP19aが見い出された。ルシフーェラゼを用いたレポーター法による解析から、CYP19の発現増加はエストロゲン依存性であることが明かとなった。他の候補遺伝子についても同様な解析を現在、行っている。 2)XY個体の初期生殖腺分化過程おいて、種々の内分泌撹乱物質を暴露し、生殖細胞の増殖活性に及ぼす影響を調べた。これまでに4-octylphenolに効果が認められ、現在、他の物質について検討を継続している。
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