研究概要 |
核内オーファン受容体(薬物受容体)による細胞内情報伝達の解析 ダイオキシンは生殖毒性があると示唆されているので、性分化関連因子でありステロイドホルモン合成を調節するAd4BP/SF-1とその抑制作用を示すDax-1の細胞内での相互作用について検討した。その結果、Dax-1はSF-1と結合してSF-1のNLSを利用して核に移行すること、SF-1との結合にはDax-1の3カ所に存在しているNR boxのうちで最もN端に近いNR box1が関与すること、これらの複合体の核への移行にはDax-1のC端に存在しているAF2ドメインも重要であること、AF2ドメインに変異のある先天性副腎低形成(AHC)患者のDAX-1はSF-1依存的な核移行活性が非常に低下していることが示された。従って、正常なDAX-1の細胞内局在性が変異により乱されることにより遺伝性疾患AHCの原因の一部になることが示唆された(Mol. Endocrinol.17,in press)。 オーファン受容体と呼ばれる核内受容体がある種の化学物質と結合して遺伝子発現に影響することも示唆されており、細胞内におけるこれらの受容体とステロイドホルモン受容体、性分化関連転写因子群とのクロストークの解析も化学物質による生物への影響を明らかにするために必要である。核内オーファン受容体SXRは薬物センサーとしてCYP3A4やMDR1などの薬物の代謝や排出に関与する遺伝子の発現制御に関与するだけでなく、生体内ステロイド代謝体センサーとして肝臓などでの脂質代謝に重要な役割をしているリガンド依存的な転写因子である。SXRはある種の内分泌撹乱物質により活性化されることが知られており、内分泌撹乱のメカニズムを理解するためにはその機能解析が重要である。SXRのNLSを同定し、核移行のメカニズムを明らかにした(Mol. Pharmacol.,63,524-531,2003)。
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