研究概要 |
昨年度に引き続き,フェノール環4枚からなるカリックス[4]アレーンに比べてより大きな疎水的空洞を有するカリックス[6]アレーン(フェノール環6枚により構成)部位の1,3,5位下部リムをジフェニルホスフィノメチレン基ならびにジフェニルホスフィノエチレン基で修飾したホスフィン配位子を用いて,ロジウム(I),イリジウム(I)との錯体化反応を行った。その結果,2つの配位子と3つの金属中心を有する極めて興味深いカプセル型錯体の合成に成功した。この錯体は溶液状態でフラクショナルな挙動を示し,その挙動は用いる溶媒により大きく異なった。溶液状態におけるフラクショナルな挙動を^<31>P-NMRで調べた結果,ある大きさの範囲にある溶媒のみがフラクショナルな挙動を押さえることが明らかになった。これは,錯体が形成するカプセルに,ある範囲できちんと収まる溶媒分子のみがフラクショナルな挙動に大きな影響を与えることを意味する。実際,溶媒分子がカプセルの中に収容された錯体を単離誌,そのX線結晶構造解析にも成功した。これらの事実は,特に疎水親水相互作用などを用いることなく,錯体の作る空孔が特定の分子を認識することが可能であることを意味しており,触媒作用への展開など,極めて興味深い現象と考えられる。
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